俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
ふぅー……と、腹の底から緊張を出すように息を吐ききってから、菜子の目をジッと見た。菜子はふいに呼び止められて戸惑っているみたいだけど、それでも俺と目を合わせてくれている。
練習もしたんだ。ちゃんと謝るぞ。
俺は意気込んで口を開いた。
「えっと、事故とはいえさ……あんな風に、お前の、む、胸を、兄の俺が、思いっきり鷲掴みしちゃったりしてっ……そのっ……」
「…………」
「ほっ……」
「…………っ」
「ほんっとうに、ごめんっ!」
「俊光君、ごめんなさーいっ!」
強調して謝りながら、手を合わせて思いっきり頭を下げた……けど、
ん?
今……菜子と声がかぶったような?
下げた頭をそうっと上げたら、お互いの顔がはたと合った。菜子も不思議そうに目を向けてくる。
な……何だって?
何て言ったのか、菜子のセリフをよーく思い出すと――
(俊光君、ごめんなさーいっ!)
…………いやいやいや。ちょっと待てって。