俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「……菜子。そう言ってくれるのはありがたいけど、やっぱり兄でも、大事な妹の胸を触ったりするのは良くねぇって。
だから……本当にごめんな」
もう一度念押しで謝ると、菜子はやっと「うん……」と頷き、俺の謝罪を受け入れてくれたようだ。
「ていうか、俊光君……」
「ん?」
「私のこと……大事な妹とかって、思ってくれてるの?」
それは昔から本人にもしっかりと伝わってるハズなのに、今さらそんなことをおずおずと訊く菜子が何か可笑しくて、自然にフッと漏れた。
「何言ってんだよ、当たり前だろ。
俺にとってお前は――かけがえのない妹なんだから……って、前にも言ったろ?」
まぁ……今は『妹』だけじゃないけどな。
秘めた想いだけは言わずに込めるだけにして伝えた……途端、菜子の表情が歪んだ。
『あ、何かヤバい』と思ったけど、時すでに遅しで、
「っ、うぅーーーー……」
あーあ、やっぱり。泣き出しちゃった。
「どじみづぐぅーん、ごべんなざーい……」
スゴい。あっという間に顔がぐちゃぐちゃ。完全に子供の泣き方だ。
「だーかーらぁ、お前が謝る必要ないんだっつーのに」
俺は近くに置いてあるティッシュを数枚引っ張り出し、そのぐちゃぐちゃの顔を拭いた。けど、拭いても拭いても溢れ出てくる、菜子の涙(と、鼻水)。
たくっ……胸を触られたってのに俺に嫌悪感を抱かせたと気にしたり、俺の言ったことに素直に泣いたりして。
兄の俺が、お前のことを妹としてだけじゃなく、
『一人の女のコ』としても見てるってことも知らないでさ。
本当にお前って純粋で……あきないヤツ。