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俊光と菜子のホントの関係

第11章 『一旦距離を置きたい』





「――ホントだ、うまいな。中のチーズがトロトロで、焼き加減もちょうどいいじゃん」

「えっへへーん、でっしょう?」


 やったー。褒めてもらえたー。

 遅い夕飯を食べている俊光君の隣で、頬杖ついて浮かれ気分で見つめていた。

 あんな変な反応をしちゃった私なのに、大事な妹だと言ってくれたり、作ったハンバーグを美味しそうに食べてくれたり。

 ホントに優しいお兄ちゃんだよね、俊光君って。


「……俺がハンバーグ食ってるのって、ガン見するほど珍しいの?」


 俊光君が、フォークに刺した一口大のハンバーグを口に入れる手前のところで、私の(熱い)視線を気にして一時停止。


「珍しいんじゃなくて、美味しそうだなーって思って」


『俊光君の表情がそう見える』のつもりで言ったのに――


「ふーん…………ほいっ」

「んぐっ」


 ひゃっ。俊光君が、ハンバーグを自分の口の中にじゃなくて、私の口の中に突っ込んできたぁ。


「モグモグ……ゴクン。んー、ジューシー……じゃなくて。何すんのよ急にぃー」

「いや。ガン見して美味しそうだって言ったから、食いたいのかと……」


 もーう、ハンバーグのことじゃないんだってばー。俊光君ってホント鈍感っ。


「失礼しちゃーう。人が食べてる物を欲しがるほど、いやしくありませんよーだっ」

「よく言うー。人が食ってる物を欲しがるほど、いやしいクセに」

「むぅー」

「ぷはっ。出た。その膨れっ面。モチかっての」


 俊光君ムカつくー。クククッて笑ってるし。


 優しいけど、天然で鈍感で、今みたいにたまにムカつく。

 それでもやっぱり、好きだなぁーって思えちゃう。


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