俊光と菜子のホントの関係
第12章 それから――
「わーい! 今日はビーフシチューだぁ! いっただっきまーす!」
私の好きな食べ物ベスト10内にランクインしている夕飯を前にしたら、ついテンションが上がっちゃってハシャイじゃった。前に座るお父さんとお母さんは、そんな私を見て、クスクスと面白そうに笑っている。
けど……この私にツッコミながらも笑ってくれるハズの俊光君は、右隣にいない。
「俊光君、今日もバイトなんだね」
「あぁ。しかも時間が最後までになったしな」
「そうよぉ。先週から急にシフト増やしたりして……。あの子、何か欲しい物でもあるのかしら?」
私の右隣は、前よりも空席になることが増えたんだー。
とはいえ、私も最近、明里達と遊んだり家に泊まったりして、夜家にいないことが増えてきたから(ていうか、私が自分で増やしたから)、俊光君も『最近、左隣が空席だよなー』とか感じてるかもしれないね。
それって、なんか寂しいかも……。ううん。離れようとしてるんだから、これでいいんだよ……
やだなぁ。『これでいいんだよ』だなんて。
私、ちょっと俊光君から離れようとするだけで、こんなに寂しがってズキズキして……。ホントに諦められるのかなぁ?
気がつくとやっぱり俊光君ばかりになっちゃう私は、首をぶるぶると横に振って気持ちを一旦かき消した。
「あっ、ねぇねぇお父さんお母さんっ。私、気になってたことがあるんだー」
牛肉とろとろのビーフシチューを口に入れる前に、お父さんとお母さんの方に身を乗り出して別の話を振ろうとした。
でも、嘘じゃないんだ。ホントに最近気になってたことがあるんだもん。
「ん、何だい?」
「何よ、気になってたことってー」
二人の、シチューを口に運ぶ動きがシンクロしてるのを見ながら、私は言い出した。