俊光と菜子のホントの関係
第12章 それから――
バイトが終わって家に着いたのが、十時になる手前の時間だった。
うぅー……十二月にしては異常に寒い。『今シーズン一番の寒気』というだけあって、寒さには強い方の俺も、さすがに今日の気温には身が震えた。夜になると暖かい陽射しがなくなる分しんしんとするから余計にだ。
……ぷっ。しかし朝の菜子、おかしかったなー。
(やだぁーっ! 今シーズン一番の寒気だなんて凍死しちゃうよぉ! こんな時に限って体育が外だしー……よしっ。私決めたっ。今日はお休みするっ!
ねぇお母さん。先生に『娘は頭が悪いのでお休みします』って電話してー。頭悪いのは本当だから嘘にはならないでしょ?)
(……あんたってばホントおバカね。それだと『学校に来て授業を受ければ治る』って言われて終わるわよ?)
あの母娘のたわい無い会話を、今日何回思い出しては何回笑いを堪えたことか。
その時俺は洗面所の方にいたけど、玄関先で賑わしくしてたから一階中筒抜け。奥にあるトイレに入っていた父さんにまで聞こえたぐらいだ。
前なら、そこで俺も会話に参加して突っ込んだりしてたけど、敢えて聞いてるだけに留めた。
……距離を置くようにしてから、もう二ヶ月近く経つ。
好きだという気持ちは一向に変わらないけど、欲の方は大分落ち着いたと思う。夢精をしてしまってからしばらくは、毎朝目覚めと共にびくびくしながら下半身を確認していたけど、最近それが自然となくなったもんな。
けど未だに、あの時の菜子の悩ましいバスタオル姿を思い出そうとすると……
「っ、うぅーさぶっ……」
冷たい風が俺に、『いつまでもボーッと突っ立ってるな』と、全身に強く当てて煽ってくる。
……早く家に入ってあったまろう。
まだ吹いてくる冷たい風に身を震わせながら、玄関のドアを開けた。