俊光と菜子のホントの関係
第12章 それから――
「ただいまー……」
「やだぁ、ホントに?
それでよく先方は許してくれたわよねー」
「あぁ。まったく……危なっかしい部下もまた可愛いが、ちゃんとすべきところは、しっかりとしておいてほしいもんだ」
玄関に入っただけで、リビングから話し声が丸々聞こえてきた。ドアが少し開いているからだ。内容からして、父さんの会社での話っぽい。
玄関から上がってドアのガラス越しにそっと覗くと、父さんと母さんがソファーで並んでくつろいでいる。奥側に座っていて、入り口の方に体を向けてはいるけれど、顔と自然だけはお互い向かい合わせているから、俺が帰ってきたことにも、こうして覗いていることにも、全然気づいてなさそうだ。
話に夢中過ぎだし。どんだけ二人の世界なんだよ。
そんなんだから――当時小学六年生の俺に、『俺と菜子は血が繋がってない』ていう大事な秘密を盗み聞きされるんだよ。
……ま、いいか。今は邪魔しちゃ悪そうだから、あとで顔出そ――
「そういえば……最近、俊光と菜子が一緒にいることが少なくなったよなー」
えっ……?
父さんの何気ないセリフで、階段へ向かおうとした足を引き止められた。