俊光と菜子のホントの関係
第12章 それから――
「――え、嘘だろ? もうこんな時間?」
俺は、智樹達と遊んだ帰りのついでに、バイト先でもある大学近くの図書館に寄っていた。
前から気になっていた本が、思いの外(おもいのほか)面白くて、ついつい夢中になって読んでしまっていた。そしたら、いつの間にか夜の時間帯になっていて驚いた。
ここに来たのが四時前だったから……三時間以上も居座ってたのか。借りに来ただけだから数十分ぐらいで済ます予定だったのに……。この本も、結局最後まで読み切っちゃったし。借りる必要もなくなってしまった。
何かに見入ったり入り込んだりするとすぐに我を忘れ、時間も、その時の状況も、頭からすっぽ抜けてしまうという昔からのこのクセ。気をつけてはいるつもりが、気づいたらいつもコレだ。もう、一生治らないだろうな。
バイト中の先輩達にそそくさと挨拶をし、暖房で温もっている中側から出入口手前の方に来ると、極端に気温が低くなり身震いした。自動ドアが人の出入りで頻繁に開閉していて、その都度ひんやりとした空気が流れ込んでくるから、ここだけ常に外みたいだ。
クリスマス時期でここまで寒いのも珍しい。さすが、『数年に一度の寒波』だ。そうでなくても、今年の十二月は異常に寒かった。このままいったら、一月・二月なんて極寒レベルにまで達するんじゃないのか?
だとしたら……菜子のヤツは可哀想だよな。これから暖かくなるまでずーっと『凍えちゃうよぉー!』って騒ぎ続けるハメになりそう。極度の寒がりも大変だ。
俺は、周りに気づかれない程度の笑いを漏らしつつ、Pコートのボタンを留め、冷たい空気が入らないようにマフラーを首にしっかりと巻いてから図書館をあとにした。
外の冷たい空気を肌で感じながら、駅への通り道でもある、公園内の広い並木道をゆっくりと歩く。
すると遠くの前方から、子供達が並木道の中央を縦三列に並んで厳かに歩いてくる。耳を澄ますと、歌声っぽいのまで聞こえてくる。