俊光と菜子のホントの関係
第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』
「えーと、仕上げにー……」
晃君のアドバイスを思い出しながら、オイルトリートメントを手のひらで伸ばす。それを、毛先に揉み込んでなじませて、手に残ったのは、頭を撫でるようにして全体的につける……と。
あ、ホントだー。髪が潤って、毛先の束感と動きがより出てる。わぁー、何か一歩大人になっちゃったって感じ!
えへへー。これだったら大学生の俊光君と……
「はっ! ダメダメっ!」
首をブンブンと横に振って、出しかけた妄想をかき消した。
もーう私ってば。俊光君のこと諦めるって決めたのに、浮かれちゃうとすぐそっちに持っていこうとするんだから。
こんなんだから私……いまだに俊光君のことを、一ミリも諦められてないんだよね。
それどころか――
「……菜子? おはよ」
「っ!」
耳に馴染んでいる低い声に、ドキンと心臓が跳ねた。
「あっ、俊光くっ……おはよっ」
ひゃーっ! 考えてたら俊光君が来ちゃった!
ドキマギしながら、入り口に立つ俊光君を見た。
俊光君って朝に弱いから、まだどこかボーッとしてるけど……お母さん譲りの美形は、どんな顔をしていてもカッコいい。
私は朝に強い方なのに、俊光君に見惚れて、俊光君以上にボーッとしちゃっていた。