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俊光と菜子のホントの関係

第2章 『俺と菜子』



『……もしもし?』


 2・3コール程で、吉野が電話に出た。


「あ、もしもし? 吉野?」

『うん。池崎……どうかした?』

「あー……ごめんっ。急で申し訳ないけど、映画……行けそうにないんだ」

『えっ……どうして?』


 あー、吉野の声が聞くからに落胆してる……。胸が痛むけど、しょうがない。


「その……さっき、妹が風邪で倒れてさ。今、病院なんだ」

『そ、そうなんだ……。大丈夫なの?』

「あぁ。病室で休んでていいって言われてるし、点滴を打てば大丈夫だろうって」

『そうか……。あっ、じゃあさ、時間ずらそうか』

「……え?」

『妹さん、病院で休んでてもいいんでしょ? そしたら、そのまま寝かせておいた方が池崎も出かけられるじゃん』

「あ、だけど親もいないし、一人にするわけには……」

『でも、病院なら大丈夫じゃない。看病してくれるし、ただの風邪ならさ、別に池崎がずっとついてなくてもいいでしょ?』


 吉野、必死に誘おうとしてくる。

 身内のことを差し置いてでも来てほしいって……。

 そう……だよな。吉野からしたら、せっかく勇気を出して誘ってオッケーされたのに、急に行けないとか言われても考えられないよな、きっと。


 わかるけど……それでも俺は、

 菜子のそばにいたいんだ。


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