俊光と菜子のホントの関係
第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』
チョコが入った小さな紙袋を持って、俊光君の部屋のドアの前に立つ。
お母さんに驚かされて激しくバックバクしていたのは、また普通のドッキドキに戻った。
俊光君、起きてるかなぁ? だいたいいつも部屋から出てくるのが遅いけど、今日はそのいつもよりも遅い。もしかしたら、大学が二時限目以降からとかで、まだ寝てるかもしれない。だったら、起こしたら悪いよね……?
ううんっ。でも、これだけはどーしても誰よりも一番に渡したいんだもん。お母さんにだって先を越されたくないもん。だから渡すなら今だもんね! 仮に起こしちゃったとしても、笑って許してもらえばいいよね!
私、いよいよ俊光君に……最後の本命チョコを渡しちゃうよ!
すうーっはぁーっと息を整えて、いざ、ノック!
……を、しようとしたら、部屋の中から、ドタドタと足音っぽいのが聞こえてきた。
あれ? 俊光君、起きてたんだぁ。でも中でドタドタしたりして、一体何をやってるんだろう? ひょっとして……ダンスかなぁ。キレッキレに踊れば目覚めもスッキリー、なんてね。あははっ、俊光君がそんなことをしてたらウケちゃう。
でもホント、何やってんだろ?
ドアに顔を近づけて、よーく耳をすませていると――
「やっば、寝坊したっ!」と慌てた声と共に、
いきなり――バンッ! とドアが開いた。と思ったら、
私の顔面にも――バンッ!
「ぎゃふう!」
「……え、『ぎゃふう』? ……わっ、菜子っ!?」
俊光君は、顔を押さえてうずくまっている私に気づくと、ビックリして飛び上がった。
ていうかっ……いっ、いだいぃ(痛いぃ)……。
「あー悪いっ。いるとは思わなくて、勢いよく開けちまった。大丈夫か……?」
「うぅー……見てのとおり、あんまり大丈夫じゃないよぉー」
さっきまでドッキドキしてたのが、『バンッ!』でぶっ飛んじゃったぁ。
兄(本命)チョコを渡す出だしがこれって……どんだけぇー?