俊光と菜子のホントの関係
第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』
「……あ、いけねっ。ホントに行かないとっ。
コレ、ありがとな。中身はあとでゆっくり見るから」
「うん……」
俊光君は紙袋を軽く掲げて見せてから、いそいそと階段の方へ歩き出した。
おセンチな気分を振りきりたくて、明るく『いってらっしゃーい』と手を振って背中を見送ろうとしたのに、
今度は――俊光君が自分で足を止めて、私の方に振り返った。
「え……? どうしたの? 俊光君」
俊光君は何かに迷ってそうにしながら、「あのさ……」と切り出した。
「なぁに?」
「最初に見た時から、思ってたんだけど……」
「うん」
「その……片側にしてる髪型と、前にあげたヘアゴム……よく似合ってるよ」
「…………あっ」
う……うそぉー……。
俊光君……髪型とヘアゴムに気づいてくれてたんだ。
それを、最初からずっと気にしててくれて、時間がないのに足を止めてまで、『似合ってるよ』って柔らかい顔して言ってくれた……。
やだなぁもうっ……。俊光君ってばホントに天然なんだから。
そんなことされたら私、いつまでも俊光君のことを普通のお兄ちゃんとして見れないし、いつまでも普通の妹に戻れないよぉ……。
今年で最後って決めていたのに、来年もまた本命チョコをあげたくなっちゃうよぉ……。
俊光君……やっぱり、私……私っ――
「ーーーーっ、俊光君っ……!」
「わっ……! えっ……菜子っ……!?」
真っ正面からアタックしちゃう勢いで俊光君の胸に飛び込んで、脇の下に腕を通して背中に回すと、
俊光君の首元に顔をうずめながら、
しっくりして安心出来て心地いい俊光君のぬくもりを、身体で感じながら、
ぎゅうーっとして抱きついた。