俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
細長い黒の小箱に十字に巻かれているシルバーのリボンを優しくほどき、蓋を開けてみると、
「わ……」
中身は、小さくてコロンとした、ただ赤いというよりも深紅色と表現するのがぴったりの、深く濃い赤色をしたハート。それが五個、お利口に横に並んで入っている。
一瞬宝石かと思った。あまりにきらびやかで。菜子がくれた物という認識でから、チョコの良さに拍車がかかってそう見えているだけかもしれないけど。
「へぇースゲーな。何そのチョコ。しかも全部ハートじゃん」
智樹もチョコの美しさに感心しながら、そう言った。
『全部ハート』と傍から言われると、やけに照れるな。
「菜子が言うには、『本物のチョコ』らしいぞ」
「本物のチョコ……ねぇ……。ふーん」
菜子からのチョコといえば、今までは花のデザインとかクマの形とか、そういうほのぼのとしたチョコだったのに、今回のは全然違う。シャンパンとかと合いそうな、大人びたチョコだ。そう考えると……うん、確かに。『本物のチョコ』というだけある。
「智樹が貰った中には、菜子と同じチョコってあったりするのか?」
「いや、それはなかったと思うぞ」
「そ、そうか……」
こんなに大量にある智樹のチョコの中に一個も入っていないとなると、菜子のチョコの特別感が更に増した気がした。
急に気恥ずかしくなり、たまらずチョコの蓋を閉じようとしたら、
智樹が「……なぁ、俊光」と、俺の動きを止めるように声をかけてきた。
「え、何?」
「てことは、それってさー……」
「ん……?」
智樹は何やら言葉を選びながら片腕で頬杖をつくと、意味深に笑みを浮かべ、
「――『本命』……だったりして」
人を誘惑するように囁いた。