俊光と菜子のホントの関係
第15章 『兄チョコに隠されていた想いに……』
番号を見つけて、発信ボタンをタップする。
菜子……。
コールが菜子を呼び続ける。
プルルル……と、俺から鳴るドキドキ。その二つの音を同時に聴きながら、
もう片方の手で持っている本命チョコを見つめながら、
何て伝えようか……
と考えようとした。
「っ!」
前触れもなく、コールが『プルッ……』と、中途半端なところで鳴り止んだ。
『……もしもし? 俊光君……?』
菜子特有の幼(おさな)げな声が耳に響いた途端、ドキッと心臓が強く打たれる。『わっ、電話に出たぞ』なんて、当たり前のことにさえもつい驚いてしまう。
緊張も、一気に高まった。
「あっ……菜子。ごめんな、急に。ひょっとして今、明里ちゃんとかと遊んでいたんじゃ……」
「うん、そうだよ」
「やっぱそうか。ホントにごめん。でも今……ちょっとだけ、大丈夫か?」
『あっ、うん。大丈夫だよ』
電話越しでは菜子の声とは別に、街の雑踏音もある。ちょうど歩いていたところだったのかもしれない。
「外にいるのか?」
『うん。でも隅に移動したから、ちゃんと聞こえてるよ。
……で、どうしたの? 電話したりして。何かあったの?』
「うん…………」
『……俊光君?』
ホントに……いいんだよな?
菜子に、本当の想いを伝えても……いいんだよな?
俺は、勇気を貰うように、
でも、中のハートが溶けちゃわないように、
菜子からの本命チョコを、きゅっ……と握り返した。