俊光と菜子のホントの関係
第16章 『迫ってくる、もう一つの本命チョコ』
「……その代わりと言ってはなんだけど……」
「はい?」
三人から少し離れると、智樹さんはコソコソと口を開いた。
「少しだけ、オレの妹になってもらおっかな?」
「へ? 妹になってもらうって……?」
どういうことか掴めないままでいると、
「ちょっとぉ、何なのよあんた。うちらが先に逆ナンしてたのに、割り込みするってあり得なーい」
三人の女性のうちの一人が、私に突っかかるように言ってきた。
「あの、私別に逆ナンの割り込みなんてしてなっ……」
私が何かしらを言い返すよりも先に、智樹さんがすっと一歩前に出て、
「あのねー、このコ実は……オレの妹なの」
「へぇ!?」
堂々とウソをついちゃった!
「は? 妹さんっ?」
「そっ。可愛いだろ。だからごめんな。オレ、これから妹と出掛けるから。な? 菜・子」
「いっ!?」
智樹さんは私の肩をポンッと叩くと、さりげなくウインクで目配せをしてくる。
『調子を合わせて』……ということですか。
なるほど。智樹さんは逆ナンをお断りしたいんだね。だから私を妹に……。
どう演じればいいかわかんないけど、とりあえず「えへへ。そうなんですー」と愛想笑いをしてみた。
「そうなの。言われてみれば似てるかも……」
「だろー?」
智樹さんは得意げに胸を張った。
もちろんこれは、ただのフリなんだけど……
私と智樹さんが兄妹というのは……実は、当たらずとも遠からずだったりして。
実のお兄ちゃんの俊光君よりも、他人の智樹さんとの方が『兄妹みたい』って言われるんだよね。そんなに似てるのかな? 私と智樹さんって。
「よし、じゃあ行くか! 我が妹よ!」
「あ、うんっ。行こ行こ!
とも……じゃなくて……お兄ちゃんっ」
私は智樹さんに肩を組まれ、ポカンとする三人から離れていった。
偶然とはいえ……智樹さんとこうして一緒にいるとこを、もし明里に見られたりしたら、
『勝手に抜け出した上に抜け駆けって、どういう神経してんのよっ!』
とかいって、激おこぷんぷん丸だろうなぁ。
あの三人の女の人よりも、智樹さんが絡んだ時の明里の方が一番恐ろしや恐ろしやなんだよぉ。
明里、いろいろとごめんなさーい……。