俊光と菜子のホントの関係
第16章 『迫ってくる、もう一つの本命チョコ』
「…………」
俊光君、お姉さんからの突然の告白でびっくりしてるんだろうね。黙りこくっちゃってる……。
私と一緒にいるメガネのお兄さんの反応も気になって見上げてみるけど、表情はこれっぽっちも変わってなくて、相変わらず曲者みたいに中をジッと覗いているだけだった。
不安で不安でしょうがない気持ちが、ぐるぐると黒く渦巻いてくる。
やだぁ、どうしよう……。あんなキレイで大人っぽいお姉さんに『好きよ』みたいなことを言われたら、俊光君だって悪い気がしないよね?
そうなると……
(ごめん菜子。俺さ、キレイで大人っぽい山本先輩と付き合うことにしたんだ。
だから、あの電話でのことはなかったことにしてくれ)
そっ……そんなのいやぁーっ! なかったことにするなんて出来ないよぉーっ!
私が勝手な妄想をして悲しんじゃっていると――
「……山本先輩、ありがとうございます」
俊光君が、お姉さんに向かってお礼を言った……。
ウソ、俊光君……ちょっと待ってよ。ありがとうございますってことは……ホントにお姉さんの告白を受け取っちゃうってことなの?
やだよぉ。兄妹でも両想いになれると思ってたのに……。
俊光君、お願いっ。他の人のところにいかないでっ!
「……山本先輩の気持ちは本当にありがたいとは思いますが……すみません。
そのチョコも、先輩の告白も……受け取れません」
……へ?
俊光君は真っ直ぐにお姉さんを見つめながら伝えると、頭を少しだけ下げた。
俊光君……お姉さんの告白を、断った……。