俊光と菜子のホントの関係
第17章 『重なる、兄妹のホントの想い』
「こら。何逃げてんだよ」
菜子の背中に向かってムッとした声を出すと、菜子はますますカーテンにぎゅうっとしがみつく。
「だっ、だって……あとからものすごーく恥ずかしくなってきちゃったんだもんっ。
俊光君の前で、あのお姉さんにあんなこと言っちゃったから……」
(――俊光君だけは、取らないで下さいっ!
私には、俊光君しかいないんですっ! 取られたらオワターなんです!)
……ダメだ。少しでも思い出すと顔が緩む。
「そんなに恥ずかしがるなよ。俺は……嬉しかったんだしさ」
「でもぉ……」
「それにお前、電話の続きを聞きに、わざわざここに来てくれたんだろ?」
「うっ……うん……」
「その続きを……ていうか、改めて最初からちゃんと言いたい。お前の顔を見て、真正面からちゃんと気持ちを伝えたいんだ」
「…………」
「だから、こっち向けよ。菜子」
言葉も口調も柔らかくして言うと、それでちょっと気が変わってくれたのか。菜子はしがみついていた手を少し緩めて、おずおずと俺の方に振り向こうとした。
けど、俺と一瞬だけ目を合わせた途端――
「やっ……やっぱり無理ぃーっ!」
と、全力で拒否り、カーテンにグルグルと巻き付いて、姿まで見せなくした。
あー。小学生の頃、友達とよくこうしてカーテンに巻き付いて遊んでたなー。たったそれだけのことなのに、やけに面白くてさ。あきずに何回も何回もグルグルして、最終的に目までグルグル回ってしまう始末……
なんて、今は懐かしく思い出している場合じゃない。
「お前なぁ、遊んでないで出てこいって」
「いやぁっ。どうしても恥ずかしいんだもんっ!」
たくっ……どうしたものか。
せっかく会えて二人きりになれたってのに、これじゃあ埒(らち)が明かないぞ。
はぁ、仕方ない。
押してダメなら……引くしかないか。