俊光と菜子のホントの関係
第17章 『重なる、兄妹のホントの想い』
――鼓膜のじんじんとした痛みに耐えながら、長テーブルに設置してあるパイプ椅子に家同様、右に俺、左に菜子と横に並んで座った。
それから菜子に問い詰められた俺は――俺が小学六年生の頃、父さんと母さんから偶然盗み聞きしてしまった内容を全部話した。
俺は母さん側の子で、菜子は父さん側の子ということも。
そのことを父さんと母さんは、菜子が高校を卒業したあと、俺達に打ち明けるつもりでいるということも。
俺達家族のことが大好きな菜子が、実は俺と母さんが、菜子とは血が繋がってなかった……という事実には、すごくショックを受けているハズだ。
絶対に嘆き悲しむと思っていた。
だけど菜子は――
「ーーーーっ、もうっ! もうもうもうもうもぉーーうっ! 俊光君のっ、バカバカバカバカバカァーーッ!」
プンスカと怒りながらモーモーと牛になった次には『バカ』を連呼しだし、俺の胸をポカポカと殴ってくる(……が、全然痛くない)。
「そんな重大なことを、小学六年生の頃から知っておきながら、妹の私にずーっと黙っていたりするなんて、あんまりだよぉーっ」
「いや、だってそれは……まぁ、とにかく落ち着けよ」
「落ち着けるワケないじゃんっ。俊光君の天然っ」
どうどうとしても一向に収まらない。
無理もないんだけど、思っていたリアクションと違うから、どう対処していいやら。
しかし、俺はてっきり……菜子も事実を知って、それから俺のことを意識しだして好きになってくれたのだとばかり思っていたのに、
まさかの『知らなかった』とは。
父さん母さん、ごめん。大事な事実を、俺が先に菜子に話してしまって。俺、物事を慎重に判断出来なかったぐらい舞い上がってた。
いや。正直、今でも舞い上がっている。
俺を実の兄だと信じて疑わなかった菜子が、兄妹の垣根を越えて俺のことを本気で好きになってしまっただなんてわかったら……たまらなく可愛くて。
父さんと母さんに申し訳ない気持ちがあるハズなのに、俺ってヤツは。
「俊光君、バカにしてるでしょう」
「はっ?」
ハッとして見れば、不機嫌な菜子の頬が膨らみを増して、モチ化している。
「別に、バカになんてしてねぇよ」
「ウソッ。ニタニタ笑ってるしっ」
「いっ!?」
ヤバ。思考が駄々漏れてた。