俊光と菜子のホントの関係
第18章 『三人で合コン』
『そんじゃあ、次の曲もいっちゃうぞーっ!
ミュージック、カマン(カモン)!』
「イエーイッ!」
「い……イエーイ……」
ハイテンションな二人のあとにとりあえず付いていこうと、私は持ってるだけだったマラカスをのそのそとシャカシャカ鳴らしてみた。
にしても……まだ夢みたい……。
俊光君とお母さんとは血が繋がってなかったことには、まだ複雑な気持ちもあるけど……
それでも、俊光君と両想いになれたことには、素直にすごく嬉しい。
お兄ちゃんでもある俊光君が、妹の私を好きだったなんて……ひゃーっ。
それに、抱きしめてくれたり、おでこと頬にまでキスしてくれたりで……。はぁー、私もう胸いっぱいお腹いっぱいだよぉー。
だけど、最後のだけは惜しかったなぁ……。
(今だけ……兄妹抜きの恋人でいさせて)
あの時、明里と智樹さんがあと数十秒遅く来てくれてたら、
私は、俊光君と……
「んー…………」
「…………もしもーし、菜子ぉ。目つむって唇突き出して何やってんの? タコのものまね?」
「んっ、んへぇっ!?」
智樹さんに熱烈な声援を送っていたハズの明里が、いつの間にか私の方を怪しそうに見ていた。
わっ、甘い妄想をしていたのが駄々漏れちゃってた? やだぁっ。これじゃあ私、恥ずかしいヤツだしーっ。
「はっはぁーん。さては、俊光さんのことでも思い出してたなぁー?」
まさにそのとおりでギクッとしたけど、
「い、いや、そのようなことはごさりませんよっ? ほらねっ。えへへーっ」
変な日本語で誤魔化してから、私の華麗なマラカスさばきを明里に見せつけてみた。
「はぁーあ、無理もないかぁー。なんせあのお兄様と、恋人同士だもんねぇー。そりゃあ、晃(ひかる)達との合コンがどうでもよくなるわぁ」
「どうでもよくなったんじゃなくて、忘れてたんだってばぁ」
「どっちにしても薄情ですが、何か?」
「うぐっ……」
そうなんです。私は明里が図書館に来るまで、晃君達との合コンをすーっかり忘れてたんです。そのまま家にも帰ろうともしてました。
肩身が狭くなった私の気持ちは、しゅるるるる……と縮んでいって、タバコの箱ぐらいの小さなサイズにまでなっちゃった。