俊光と菜子のホントの関係
第18章 『三人で合コン』
「……おっ、早いな。あと10分で図書館が閉まる時間か」
「えっ」
智樹さんが腕時計を見ながら言った。それを聞くと、明里の手を拭いていた私の手が、ピタッと止まる。
てことは、俊光君があと一時間もしないうちに帰ってくるんだぁ。うわぁー、早く会いたいなぁ……。でも、照れ臭くて会いづらいような気もしちゃうなぁ……。って、やだなぁ私ったら。会いたいの会いたくないの、どっちなのぉ?
なーんてことを一人でくすぐったく考えていたら、向かいの智樹さんがジンジャーエールを飲みながら、ニコニコと子供に向けるような笑顔で私を見つめてきた。
「ふーん……。菜子ちゃん、『彼氏』が帰ってくるのがそんなに楽しみになんだー」
「かぁっ……! かかぁっ、かぁっ……彼氏ぃー!?」
『彼氏』というフレーズに大興奮して、かぁかぁカラスになっちゃった私。智樹さんは、私のカラスな反応を面白がっては、イタズラっぽくシシシと笑っている。ちなみに私の隣の明里は、まだ上の空から戻ってこない。
彼氏……彼氏……。そうなんだよね。恋人ってことは『彼氏』でもあるんだよね。そっかぁ。俊光君を彼氏にするのはいつも妄想限定だったけど、現実でも俊光君のことを彼氏扱いしてもいいんだぁ。
と思うと、俊光君と恋人同士になった実感度がぐんっとアップしちゃった。ひゃーっ。もうたまらないよぉーっ。
「ねぇ明里ぃ、どうしよー。私このあと、俊光君とどんな顔して会えばいいのかわかんなくなっちゃったよぉー」
私がデレデレしながら、明里の体を思いっきりゆさゆさと揺らしているのに、その明里は……
「うーん……そぉーねぇー……」と、やっぱりおぼろげな返事しかしてくれなかった。