俊光と菜子のホントの関係
第18章 『三人で合コン』
「しゃーないなぁー。じゃあアイツが帰ってくるまで、オレが俊光の代理として、菜子ちゃんの気持ちを紛らわしてやるか」
「…………へぇ?」
それってどういうことだろうと思い、明里を揺らすのを一旦やめて向かいの方を見てみると……智樹さんは、満面の笑みで両腕を横に大きく広げて、なにやらスタンバっている。
「さぁ、カマン菜子。美形で天然で鈍感な俊光お兄様の胸に飛び込んでこい。お前をたっぷりと可愛がってあげちゃうぞぉ」
……あ。俊光君の代理としてって――智樹さんが俊光君になりきって、私の相手をするってことぉ!?
そうだとわかっちゃった途端、なんだか急に笑いが込み上げてきちゃった。
「ぷっ……あはははっ! 智樹さん、それ全然俊光君じゃないんですけどー」
美形の俊光君と塩顔の智樹さん。確かにどっちもイケメンなんだけど、見た目が違いすぎるし、仮にそっくりでも智樹さんの胸には飛び込めないよー。
「何言ってんだよ、どう見ても俊光お兄様だろ。ほら、早く来いよ。頭がハゲるまで、たくさん『いいこいいこ』をしてやるから」
もうダメ。智樹さんが面白おかしすぎるー。似てないって言ってるのにしぶとくモノマネを続けて、私に手招きをしてくるんだもん。ツボってお腹がよじれちゃう……
「っ!?」
ふと、隣からただならぬオーラを感じた。
「なぁーこぉー……。あんたぁ、なーに自分だけ智樹さんと楽しくしてんのよぉー……」
「ひいっ……!」
おぞましい声に、ゾクッと背筋が冷える。お腹がよじれる程大笑いしていたのも、一瞬でピタリとやんじゃった。
恐る恐る目を向けてみれば……いつの間にか上の空から戻ってきていた明里が、私を鋭く睨んでいる。
ひゃわわわっ。明里の怒った顔が妖怪みたいで怖いっ。トレードマークの可愛いフワフワボブが、なんだか無数のダークな蛇に見えてきたよぉ……。これでもし、目をバッチリ合わせたりでもしたら、私……石にされちゃうかもしれないっ! ひゃーっ、ヤバーいっ!
私は明里の恐怖によって、ホラーの世界へと入り込んじゃっていた。