俊光と菜子のホントの関係
第19章 『二人きりの夜道』
「じゃあそこまで気にやむのなら……俺が死ぬほど貧乏になった時は、お前がお金を出して助けてくれるか?」
「えー、俊光君が死ぬほど貧乏ぉ? あははっ。超ウケるー」
「おい。妹が兄の貧乏にバカウケするって、どんだけだ」
「だってー、ボロボロの服を着た俊光君が、道端に座ってカンカンを前に置いて、そんでお恵みを入れてもらうのを待っている姿を想像しちゃったら、とんでもなくおかしいんだもん」
「お前、この一瞬でよくそこまで酷い想像をしてくれるよな」
「えへへ。この前ね、お笑い番組でそういうコントをやってたのを観たばかりだったから、それがまだ頭に残ってて。だから想像しやすかったんだー」
夜の遅いこの時間に、あんまり声を出して話すと近所迷惑になるのは重々わかってはいるものの。兄妹の空気感が心地いいのと、菜子が無邪気に笑っているのをもっと見ていたいのとが勝(まさ)ったら、より会話を弾ませてしまう。
……そうなんだよな。
俺は昔から……たぶんきっと、初めて兄妹になった時からずっと……菜子と一緒にいるのが好きなんだ。
「んで、三人でのカラオケはどうだったんだ?」
「うん、楽しかったよ! 智樹さんめっちゃ歌がプロだし、明里も智樹さんにメロメロで大興奮だったし。
あっ。そうそうそれで、明里が智樹さんにここぞとばかりにいろいろと質問したりしてね……」
俺にとってかけがえのない妹で、恋人にもなったばかりの菜子。
……触れたい。
俺は何も言わずに、自分の左手を伸ばして菜子の右手を捕まえると――指を絡ませて、ぎゅっ……と込めた。
「っ、俊光君……」
いつか菜子にドキドキさせられた恋人繋ぎを、自分からした。