俊光と菜子のホントの関係
第19章 『二人きりの夜道』
指を絡ませた手繋ぎで帰路を歩きながらも、心地いい兄妹の会話は途切れることなく弾む。あんだけバクバクしていた心臓も大分落ち着きを取り戻し、恋人繋ぎにもだんだん慣れてきた。
二月中旬の夜の空気はまだ真冬並で、吐く息も白く、キンと張りつめたように冷たいハズなのに、菜子の手のぬくもりが身体中に行き渡ってあったかくなっているから、全然寒くない。
極度の寒がりの菜子も、珍しく身を震わせている様子もなく、ニコニコと楽しそうに笑みを浮かべている。繋いでいる右手は片時も離そうとせずに、空いている左手だけで身振り手振りをして、カラオケでの出来事を無邪気に話している。
良かった……。すっかり気が紛れたみたいだな。
菜子に事実をうっかりバラして不安がらせてしまったけれど……恋人同士にもなれたことには素直に嬉しいし、どうしたって浮かれてしまう。
血の繋がっていない俺と菜子を、当たり前に兄妹として育ててきてくれた父さんと母さんには、ホントだったら……事実をすでに知っていて、なおかつ恋人同士にもなったということを、すぐにでも言うべきなのかもしれない。
でも、俺は……
「……あ。もうすぐおうちに着いちゃうね」
「えっ……?」
ホントだ。菜子に言われて気づいた。いつの間にか、家をあと何件か通りすぎたら自宅……というとこにまで来ていた。
情けない兄になっている場合じゃなかった。家に帰る前に、菜子と話しておきたい。
俺が前触れもなく足を止めると、手を繋いでいる菜子の足をも必然的に止めた。