俊光と菜子のホントの関係
第19章 『二人きりの夜道』
「俊光君、どうしたの?」
暗がりの中で、菜子が不思議そうに俺の顔を下から覗き込む。街灯から離れたところで止まったし、高さのあるブロック塀が生活の灯りを遮っているから、今の俺達には明かりがほとんどない。けど、月明かりだけは、菜子の表情をほんのりと照らしていた。
女子高生らしからぬ無垢な顔を愛おしく見つめながら、俺は話を切り出した。
「菜子。あのさ、俺達のことなんだけど……」
「う……うん」
「とりあえず、今はまだ……父さんと母さんには言わないで黙っておくか」
「……へぇ?」
俺からの提案に、菜子が澄んだ目を真ん丸くして見開いた。
菜子は、今日事実を聞いてしまったばかりだから、まだ気持ちに整理がつききれていないだろうし。
俺も……今は何も考えずに、菜子と二人で想いに浸っていたい。
父さんと母さんに対して、こんな隠し事をするなんてのは、また新たに申し訳ない気持ちが沸きそうになるけれど……それを抑え込んででも、今はまだ黙っておきたいんだ。