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俊光と菜子のホントの関係

第19章 『二人きりの夜道』



「ほら。父さんと母さんだって、菜子が高校卒業するまで事実を黙っておくつもりでいるんだし、『隠し事は誰しもあることだから仕方ないけど……』って俺達にもよく言ってただろ? だから、ちょっとぐらい黙っていたって、バチも祟りも当たったりしねぇよ」

「俊光君……」


 俺が内心とは裏腹に、隠すことを楽観視しているかのように話してみせた。それで菜子は心がほぐれたのか、真ん丸に開いていた目を少し緩ませた。


「いつ打ち明けるかは、もう少し経ってから二人で一緒に考えるでも遅くはないだろ。焦らずゆっくりいこうぜ。な?」

「……うんっ」


 最後まで笑いかけると、菜子はワクワクと楽しそうにして頷いてくれた。これって小さい頃、戸棚にあったおやつを菜子と一緒に盗み食ったあと、『二人だけの秘密だぞ』ってこっそりゆびきりをした時と似ているな。あの時も菜子は、そうやって無邪気に頷いてくれたんだっけ。

 こんな隠し事をするとしても、菜子が相変わらず菜子でいられていることにホッとする。抑え込んでいる罪悪感からも、心が救われる。

 うん……。今は、これでいいよな。


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