俊光と菜子のホントの関係
第19章 『二人きりの夜道』
「……ねぇねぇ、俊光君」
「ん、何だ?」
「…………んっ」
「…………ん?」
なぜか――菜子が目をつむって、俺に向かって唇を突き出してくるぞ。
「何だそれ。変顔シリーズの新作、タコのモノマネか?」
「んへぇ!? もっ、もーうっ! 俊光君の、ど鈍感!」
「いってぇっ!」
素直に見たまんまを言っただけなのに、菜子のヤツ、顔色までタコみたいに真っ赤っかにして怒りだしたぞ。おまけに、グーで胸を思いっきり殴りつけてきたし。
「それ、カラオケで明里にも間違われたヤツ!」
「え、違うのか?」
「違うよぉっ。その……図書館であともう少しだったのに、明里と智樹さんが来ちゃって出来なかったから。だからするなら、家に帰る前の今かなぁって思って、私……。なのに、俊光君ったらひどいよぉ」
「…………あっ」
菜子が恥ずかしそうにしながらポツポツと明かしてくれたことで、やっとタコのモノマネの真相が解けた。と同時に、顔が焼けたように熱くなった。
あー……なるほど。それは、怒られても、殴られても、『ど鈍感』と罵(ののし)られても、仕方のないことだよな。
せっかく菜子から行動を起こしてくれてたのに……俺ってヤツは。