俊光と菜子のホントの関係
第19章 『二人きりの夜道』
「お父さん、お母さん、ただいまぁっ!」
着いた家の玄関先で、ずっと離さなかった恋人繋ぎを名残惜しく解いてから中に入ると、菜子が先に元気よくリビングへ飛び込んだ。わざとらしさは全然なく、ごく自然に。
「おかえりー。あら、二人とも一緒だったのね」
「今日も寒かっただろう。ポットにお湯が沸いているから、何かあったかい物でも飲むといい」
「うん、そうするー」
ソファーで仲良くくつろいでいた父さんと母さんは、途端に優しい親の顔になり、俺達子供をあたたかく迎え入れる。菜子は二人にニコニコした笑みを見せ、首に巻いてあるマフラーを取りながら無邪気に返事をした。
「私ココアもらおーっと。俊光君はコーヒーでいい?」
「あぁ。ありがと」
……血が繋がっていない事実を知ってしまった菜子だけど、よそよそしい態度をとったりとか、不自然な振る舞いになったりとかは、今のところなさそうだな。
菜子の様子を見て安心すると、俺はコートを脱ぎながら、誰にもわからないように静かに息をついた。
「あっ、そうそう。ちょっと菜子、晃(ひかる)君達との合コンはどうだったのよ。いい人いたのぉ?」
「はっ……!? ごっ、合コンだと!? 菜子がかっ!?」
母さんが身を乗り出して興味津々に尋ねると、隣の父さんが『それは大事件だ』と言わんばかりに血相を変える。娘の合コンに対し、父さんと母さんの温度差がありすぎるのが可笑しくて、今度は誰が見てもわかるように思いっきり吹いてしまった。
でも、父さんが驚くのもわかる。俺も図書館で、菜子が合コンに行こうとしていたことを聞かされた時、それに近いリアクションをしたから。