俊光と菜子のホントの関係
第20章 『大好きだから……』
「菜子は昔から『お兄ちゃんお兄ちゃん』だったものねー。小学校の途中から『俊光君俊光君』になったけど」
「あ……う、うん。そう、だね。えへへー」
まさか、俊光君への『もう一つのホントの気持ち』を見透かされちゃった? と思って、内心ハラハラドキドキしまくってたけど……どうやらお母さんは、私のいつもの兄ラブとして捉えているだけだったみたい。
バレなくて良かったと心の中で安心してホッとしていたら、お母さんまで「良かった……。なんか安心しちゃった」とホッと息をつきながら言ってきた。
心の中とおんなじことを言われて、慌てて隣をパッと見た。
お母さんは、私と目が合うと、ふふっと優しく微笑んだ。
「このところのあんたと俊光、それぞれになってきたでしょ? それでね、お父さんとお母さん……二人が離れていってるように見えたから、ちょっとだけ寂しがってたのよ」
「あ……」
お母さんとお父さんの本音に触れたら、胸の奥がきゅっとなって痛い。
私が、俊光君を諦めなきゃと距離を取っていたことで……お母さんとお父さんに寂しい想いをさせていたんだね。
私まで寂しく感じて、目に熱い涙がちょっぴりジワッとした。
「どんなに仲のいい兄妹だって、ある程度大きくなれば、だんだんとそうなっていくってことぐらい十分わかってはいるんだけどね。
ごめんね、こんな話しちゃって。別に悪いって言ってるわけじゃないのよ。私とお父さんが子離れしていないだけ。ふふっ」
「お母さん……」
寂しいと話していても、私に優しく微笑む表情は変わらない、私のお母さん。
くっきり二重に、キレイに整っている顔立ち。
俊光君にはあって、私にはない……お母さんの部分。
血が繋がってないことを実感しちゃうと、また胸の奥がきゅっとなって痛くなった。