俊光と菜子のホントの関係
第20章 『大好きだから……』
「だけど無理ねぇ」
「へぇ?」
「菜子も俊光も、こーんなに可愛いんだもん。子離れなんて出来そうにないわー」
「っ……」
お母さんの心地いい頭なでなでによって、胸の奥で感じていた痛みが、すうっ……と溶けていくように消えた。
だけど、目に溜まっていた熱い涙は、消えるどころかどんどん湧いてきちゃう。私の視界までゆらゆらと揺らしてくる。
お母さんにとって私は、お腹を痛めて産んだ子供じゃないのに……お母さんは、こんなにも私のお母さんでいてくれている。
だから私……血が繋がってなかったっていう事実に、これっぽっちも気づくことも勘づくこともなく、お母さんのホントの娘でいられたんだね。
私は、留めておききれなくなってきた涙が頬を伝っちゃう前に、着ているふわもこルームウェアの袖で、目をゴシゴシと拭いた。
「お母さん。私と俊光君って、そんなに可愛い?」
「可愛い可愛い。目の中に入れても、鼻の穴に突っ込んでも、全然痛くないわよ」
「えー。鼻の穴はやだよぉー」
静かだったリビングが、私とお母さんの笑い声で賑やかになった。