俊光と菜子のホントの関係
第20章 『大好きだから……』
「お前、さっきまで母さんと一緒に居ただろ。風呂場の方にまで笑い声が聞こえてきたぞ」
「えぇっ、うそぉー」
「あれじゃあ、二階の寝室にいる父さんにまで聞こえてただろうなー」
俊光君は冗談っぽく言って笑いながら、いつものように私の右隣に座った。
わ……。
俊光君との距離が近くなると、乾かした髪からも、体からも、ソープ系の爽やかな匂いが漂ってきて、私の鼻にふわっと触れる。
はぁー……。俊光君、いい匂いー……。
「……もしかして、眠いのか?」
「へぇっ、何でっ? 全然眠くないよぉ」
「そうか? 目が半分閉じてたけど」
「あっ……。それはそのっ……えへ、えへへぇー」
匂いを嗅いでウットリドキドキしていたなんて変態みたいで。さすがの私も、そのことはハッキリと言えなくて、つい笑って誤魔化しちゃった。
「ははっ、なんだよ。変なヤツー」
「…………」
『寝る前に、二人でもうちょっとお話しよ』と誘ったのは……この毒気のない笑った顔がステキな俊光君と、もっと恋人気分に浸りたかったからなんだけど……
お母さんと笑い合っていたら、なんだか思い出を振り返りたくなっちゃった。
お母さんは私のことを、お父さんは俊光君のことを、ホントの子供としてどれだけ優しい眼差しを向けてきてくれたのかを、もっとよく知りたい。
「ねぇ俊光君。お話ついでに、一緒にアルバムも見よ」
「は? アルバム?」
「うんっ。ねぇ、いいでしょう?」
「あぁ。別にいいけど……」
「わーい、ありがとー。じゃあ私の部屋に行こー」
若干意味がわからなそうにする俊光君の腕を引っ張って、一緒にソファーから立ち上がった。