俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
「これってすごく幸せなことだし、ありがたいことだよな」
「うんっ」
菜子は間近で、いつもの無邪気な笑顔を見せて頷くと、再びアルバムに目を戻した。
だけど俺は、菜子から目が離せないでいた。
まいったな……。
外でキスをしたからってのもあるかもしれないけど……帰ってきてから要所要所で、菜子がやたらと魅力的に見えてしょうがない。
いつものように無邪気な雰囲気を振りまいていると思っていたら、父さんと母さんにわからないように、幸せそうな笑顔を俺だけに見せたり、アルバムを見ながら不意に穏やかな笑みを浮かべたりで。
帰ってきてすぐに菜子が、父さんと母さんの間で嬉しそうに話しだした時も、リビングから母さんと笑い合っている声が聞こえてきた時も、今も……家族想いな菜子を、大事にしていきたいと強く思った。
思ったハズなのに……ヤバいんだ。
黒のふわもこルームウェアを着こなす姿は、まるで小さな黒猫みたいで、愛らしくて無防備で。そんな菜子と、夜遅くに部屋で二人きり。しかも、並んで座っているところはベッド。
菜子には普通のフリをしているけれど、実は……少しでも油断をすると、この状況に流されてしまいそうになっている自分がいたりする。昔から培ってきた妹に対する免疫もどこへやらだ。
だって無理もない。俺にとって菜子はもう、妹だけじゃなくなったから。
俺のことを兄としてだけじゃなくて、一人の男として好きだと想ってくれている恋人でもあるから……。だから……
「俊光君、どうしたの? 難しそうな顔して黙りこくっちゃって」
「っ! あっ、いやっ、別になんでもっ……」
「そう……?」
やっば! 自分から地雷を踏みに行ってどうする!?