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俊光と菜子のホントの関係

第21章 『大事にしたい。なのに……』




「……はぁー、面白かったぁー」


 菜子は、ご飯を美味しく食い終わった時と同じテンションで「満足満足」と言い、アルバムを閉じた。

「ふんふんふーん」と鼻歌混じりに、アルバムをカラーボックスに戻しに行く後ろ姿を見つめながら、俺は胸を撫で下ろした。

 あの菜子を押し倒すことにならなくて良かった。偉いぞ俺。よく理性を保てた。自分で自分を褒めてやりたい。

 ベッドのヘッドボードにある置き時計に目を向けてみれば、あと十数分で日付が変わる時間だ。


「さてと。アルバムも見終わったことだし、そろそろ寝るか」


 理性が保たれているうちにこの場を切り上げようとベッドから立ち上がったら、カラーボックスに合わせてかがんでいた菜子が、すかさず俺の方へと振り返る。


「えっ……もう寝るのぉ? やだぁー」

「『やだぁー』って。お前なぁ、もう十二時近いんだぞ?」

「まだいいじゃーん。もうちょっとだけ一緒にいたいー。ねー、ダメぇ?」

「ダ…………」


 あのな菜子。アルバムに収まっている写真の頃から変わらない童顔で、上目遣いプラス、捨てられて寂しがる子猫みたいな表情をされたら……『ダメ』って言いきれないに決まってるだろ。


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