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俊光と菜子のホントの関係

第3章 番外編『オレと俊光』



「わぁーーん……おかあーさぁーんどこぉー?」

「あ?」


 なんだあれ、迷子か?

 ちっちゃい女の子が、桜吹雪の中、一人ぼっちで寂しく泣いている。

 なのに、みんなスルーって……嘆かわしいなぁ。確かに、入学式の時間は迫ってるけどさ。

 たく……しょうがない。この塩顔イケメンが、迷子の子猫ちゃんを慰めてやるとするか――

 と思って行こうとしたけど、足を止めた。

 誰かが女の子に近づいてきたからだ。



「……どうした? 迷子になったのか?」


「ぐすっ……うん……」



 お。話しかけた。みんなスルーしてたのに。

 オレと同じ真新しい制服を着ている野郎。親とかと一緒にはいなさそうだな。

 正統派なミディアムショートに、ハッキリとした二重で顔立ちも整っている。ふーん、オレとはまた違うタイプの野郎だけど、なかなかのイケメンじゃん。

 そのイケメン野郎は、女の子と同じ目線になるようにしゃがんで、慰めるためか、ヨシヨシと頭を撫でている。

 あーあ、あんなに座り込んだら制服が汚れるぞ。カバンだって、地べたに置いちゃって。


「そうかー……かわいそうにな。でも大丈夫。お母さんもきっと探してるだろうし、すぐに見つかるって。な?」

「ぐすっ……ホントぉ?」

「あぁ、本当だ。だからもう泣くな。見つかるまで一緒にいてやるから」

「……うんっ」

「よーし、いいコだ」


 アイツ……制服が汚れるのも、入学式の時間も、全く気にする様子もなく、女の子を優しく宥めてる。その女の子もアイツに心を許してきたのか、だんだんと泣き止んできた。

 ふーん……あやすのも上手いんだな。

 きっとそうやって、女も落としてたりするんじゃねぇの? はっ。だとしたら、悪いヤツ。


 オレは自分のことを棚に上げて、あのイケメン野郎を勝手に軽いヤツだと決めつけた。


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