俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
突然の母さんに、俺も菜子も体が硬直。
母さんは、さっきまで下で菜子と楽しそうに大笑いをしていたのが嘘みたいに、とても威圧的な目をして睨んでくる。そんなんだから、俺達に金縛りの術でもかけたんじゃないかとも錯覚してしまう。
体が動けなくても、冷や汗だけは滝のように流れっぱなしで止まらない。
見られた。見られてしまった。
この状況、どうしたって言い逃れ出来ないだろ――
「ーーーーっ、あんた達うるさいっ! 今何時だと思ってんのっ! こんな夜更けにいい歳こいて、ギシギシギャーギャー『取っ組み合いの兄妹ゲンカ』なんかしてんじゃないわよっ!」
「…………は?」
取っ組み合いの……兄妹ゲンカ?
ベッドの上で菜子に迫られていたところを見られてしまった流れで、俺達の新たな関係もついでにバレ、内緒事がわずか数時間で終わり……ってなることを覚悟したのに。
え。まさか母さん……この状況を見ても、俺達のことをこれっぽっちも疑わないのかよ。そりゃあ、バレてないに越したことはないんだけどさ。にしても……だろ。
内心複雑な想いに駆られて戸惑っていると、電光石火で怒鳴り散らした母さんは、呆れ気味に「ふう」と短く息をついた。