俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
「と……俊光君……」
俺が至近距離で見下ろすと、菜子は困ったようにオロオロとしだす。
「兄に馬乗りしてセックスを強要するって。とんでもねぇじゃじゃ馬妹だよな」
「だ、だってぇー……ひゃふうっ」
『大事大事』ばっかと言われていた俺は、『だってだって』ばっかの菜子の両頬を、片手だけで挟んで口を塞いでやった。菜子の唇が、面白く突き出た。ぷっ、変な顔。
「なっ、なにふんのよぉっ」
「馬乗りの仕返しだ、このっこのっ」
「うぷっうぷっ。やだ、やめてよぉっ」
頬を揉んで弄ぶと、菜子の顔がますます面白くなる。それにモチモチしているから、可笑しいし気持ちいいしでやめられない。
「はははっ、ブッサイクだなぁー」
「お母さんとおんなじことをやんないでってばっ。アンド言わないでってばぁっ」
だけどこれじゃあ、『彼女に意地悪をする彼氏』というよりは、『妹にちょっかいを出す兄』だろ。俺達って二人きりになっても、全然恋人同士になりきれねぇのな。
それもそうだ。俺達は物心つく前から、当たり前にずっと兄妹をしているんだから。今にして思えば、母さんに見られたあの状況だって、かなりドタバタだったし。とても、菜子の言う『オーマイガー』をしそうな雰囲気には見えなかったよな。母さんが『取っ組み合いの兄妹ゲンカ』としか思わなかったのも、無理もない話だ。
「俊光君、いい加減にしてよぉーっ。いじりすぎーっ」
「ぶはっ。その顔であんま怒るなって。ブサイク増し増しだぞ」
「ぶぅーっ、誰のせいよぉーっ」
それでもこれからは、菜子と一緒に恋人の関係も育んでいきたい。
兄妹の顔だけでなく、恋人の顔も見せ合っていきたい。
「……ふへ? 俊光、君?」
目と鼻の先にいる菜子を弄ぶのを止めると、面白く突き出たままの唇に……
自分の唇を、そっと重ねた。