俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
一瞬だけ重ねた唇を離すと、頬を挟まれた面白い顔が、面白いぐらいに赤く染まっていった。
「ぶっ……! はははははっ!」
ダメだ。すんげぇツボにはまった。
たまらず起き上がって腹を抱えた。
「ちょっ……ひっどぉーいっ! キスしてバカ笑いするって、どんだけぇーっ!?」
菜子もプンスカしながら俺を追うように起き上がり、揺らしまくっている俺の肩を平手で強く叩いてきた。
「はははっ。いや、俺だって笑うつもりなんてなかったんだけどさ、お前がブッサイクな顔でスッゲー真っ赤っかになるから、堪えきれなくて……はぁーあ。あんまバカ笑いさせるなよ。また母さんが『うるさいっ』つって怒鳴り込んでくるだろ」
「知らないっ。デリカシーの欠片もない俊光君なんか、お母さんに正座でお説教されちゃえばいいもんっ」
プンスカ菜子は、最後に「ふんだっ!」と言って、俺からプイッと顔を背けた。
あーあ、ヘソを曲げちゃった。かなり意地悪が過ぎたな。
「ごめんって。機嫌治せよ」
「やだっ。俊光君なんかキライッ。ホンットにキライッ」
そっぽ向かれてキライと言われても、肩に置こうとした手を払い除けられても、これっぽっちもダメージを受けない。逆に可愛くて、愛おしさが募るばかりだ。
「……菜子」
「なによっ、やだって言ってんじゃんっ」
「そんなこと言わないでさ、機嫌治して……
俺と……しよ」
「え? 『しよ』って……何を?」
「その、お前のいう……『オーマイガー』をだよ」
「…………へっ、へぇぇっ!?」
プイッとしていた菜子が、ビックリ仰天な顔してこっちに向いた。
確かに。自分でも驚いていて、ドキドキもしている。
妹なのに恋人にもなってくれた菜子を、大事にしたくて、傷つけることになったら嫌で、あんなに手を出す・出されることを、必死で拒んでいたのに……。
想いを募らせたら、『もっと触れたい』という本音の部分を、素直に出したくなった。