俊光と菜子のホントの関係
第21章 『大事にしたい。なのに……』
「だから……機嫌、治してくれるか?」
切に願うように訊くと、
「う……うぅーっ、俊光君ってばズルいっ。急に『オーマイガーしよ』って言うなんて、反則すぎてレッドカードもんだよぉっ。絶対に機嫌治してやんないって思ってたのに……治したくなっちゃうじゃんっ」
「わっ」
菜子が怒りながら、俺の首に飛びついてきた。油断して後ろに倒れそうになったけど、とっさに手で支えた。
「もうっ、俊光君のどバカっ。ど天然っ。ついでに、ど出ベソっ」
悪口をぽんぽん発する菜子の、俺の首を巻く腕の力がぎゅっと増す。若干苦しいけど、触れてほしくない部分に馬乗りされるよりかは大分マシだし……嬉しかったりもする。
「あのなぁ……感情と行動が伴ってないぞ。それに俺は『ど』をつけられるほど出ベソじゃねぇ。その前に、出ベソでもねぇし」
「むぅー、だってだってぇーっ」
また『だってだって』ばっか。苦しいハズなのに、駄々っ子みたいな菜子が可愛くて、つい笑みが溢れてしまう。
「なんなんだよ。つまりお前は、機嫌が治ったのか? 治ってないのか? どっちだよ」
「もーうっ、知らない知らないっ」
例えまだ機嫌が治ってなかったとしても、何時(なんどき)も変わらないホンワカした温もりで、いつまでも抱きつかれていたら……俺だって、もう離したくなくなるんだからな。
だから俺は、菜子の身体に腕をしっかりと巻き付けてやった。
「ごめんって。もう意地悪もしないし、ブッサイクにもしないから……な?」
「ん……」
「菜子……好きだよ。妹のお前も、恋人のお前も、両方」
「っ……わ、私もっ。どっちの俊光君も、好きっ……」
熱のこもった想いを確かめ合ったら、たまらなくキスがしたくなり、身体を少し離して顔を合せようとした。