俊光と菜子のホントの関係
第3章 番外編『オレと俊光』
「おい、お前っ!」
「……は?」
天然イケメン野郎に近づきながら声をかけた。不思議そうにオレを見てくる。だろうな。知らないヤツからいきなり話しかけられたんだから。
それでもオレは構わずに――
「早くしねーと入学式に遅れっぞ! 来いっ!」
「わっ!」
腕を思いっきり引っ張り、天然イケメン野郎を無理矢理走らせた。
「え、あ、あのっ連絡先っ――」
「すんませーん、オレ達急いでますんでー!」
ははっ! 母親からの救出作戦、大・成・功ー!
あーなんか面白くなってきた。ついでだ。このまま走って高校へ直行だ。
「ちょちょちょっ、あんた誰っ?」
オレに引っ張られたまま、天然イケメン野郎がワケわからなそうに訊いてきた。丁寧に下ろしてある前髪が、走っている振動で左右にサラサラと揺れている。
「オレは久我智樹。お前と同じ新入生だよっ。
たくっ。朝っぱらからさ、よその母親を魅了させんなよっ!」
「は、はぁー? なんだよそれっ!? そんなことしてねぇだろっ! 俺のこと知らないクセに、いきなり悪口かよっ!」
ぷはっ。自覚もねぇのかよ。顔赤くして言い返したりして。
間違いねぇ。コイツ、天然な上に鈍感なヤツだ。