俊光と菜子のホントの関係
第22章 『真夜中のオーマイガー』
「うぅ……。俊光君ばっか余裕ぶっこいてズルいよぉー。私は、こんなにもドキドキバクバクなのにー」
「俺が……余裕?」
「うん」
「あのなぁ……。余裕ぶっこいてるつもりもないし、余裕でもねぇんだよ」
こういう時に『余裕がない』なんて、男があんまり言うもんじゃないのかもしれないけど、無理してでもカッコつけるってのは、俺には到底出来ない。仮にカッコつけて隠していても、徐々に態度に表れてバレるだろうし。
「ホントにそうなの?」
「ホントにそうなのっ」
セリフをまんまオウム返しして肯定しても、イマイチ信じてなさそうだから、菜子の左手を取り、俺の胸の中心に当ててやった。
「ほら……な?」
菜子は、左手から強い鼓動が伝わっていくと、珍しい物に触れたかのように「わぁ……」と静かに声を出し、今度は口じゃなくて目を大きく開いた。
「ホントだぁー。俊光君の胸、すごくドキドキバクバクしてるねっ」
自分からしたことなんだけど……実際に菜子から言われると、かなり気恥ずかしい。
「俊光君も、私と一緒なんだね」
「うん。菜子と一緒」
『一緒』と交わし合うと、菜子が嬉しそうにはにかんだ。
……自分でも語彙力がないって思う。
菜子に対しての言葉が、ずっと『可愛い』しかない。
妹でも恋人でも……お前って、本当に可愛いヤツだよな。