俊光と菜子のホントの関係
第23章 そして翌日――
――大学あとのバイトも、何とか無事に終わって帰宅。遅い夕飯と入浴を済ませると、また菜子に「部屋でお話しよー」と無邪気に誘われ、腕を引っぱられる。が、近くにいた母さんに「二人とも待ちなさい」と呼び止められた。
何かと思ったら、
「二階の部屋で一緒に過ごすのはダメよ。お父さんとお母さん、もう寝るんだから。
いい? あんた達は今日から一ヶ月間、私達が寝たあと、お互いの部屋を行き来するの禁止だからね」
俺と菜子に、禁止令を下してきた。
「えぇーっ!? 何それーっ、聞いてないよぉーっ! ぶーぶー」
「菜子。返事は『ぶーぶー』じゃなくて、『はい』でしょ?」
「ぶっ……。はい、デス……」
というわけで、母さんに鋭く睨まれた俺達は、素直に従い、一階のリビングで話すことに。
「お母さん、厳しい。私と俊光君のこと、目に入れても鼻の穴に突っ込んでも痛くないくらい可愛いのなら、せめて一週間で勘弁してくれればいいのにー」
父さんと母さんがリビングからいなくなると、菜子はソファーの上で体育座りをして、またぶーぶーとぶーたれる。その隣で、俺もソファーに深く寄りかかり、身を沈めた。
「あんだけ騒いで睡眠を妨害したんだ。厳しくされるのも当然っちゃ当然だし、二人でいること自体を禁止されるよりかはマシだろ」
「そうだけど……」
「どうした。禁止されたのが、そんなに不服なのか?」
「うん。だって……俊光君と、オーマイガーのやり直しをしたかったんだもん」
「えっ……?」
「なのにお母さんってば、一ヶ月も禁止にしちゃうし。そりゃあ、不服にも思っちゃうよ」
菜子……。お前、あんなに酷く痛い思いをしたにも関わらず、俺とまたしたいって思ってくれていたのか。
不満たらたらの菜子の隣で、俺は胸をドキドキと鳴らした。
「だけど、俊光君は……そんな顔にしちゃった私とは、もうオーマイガーをしたくないよね」
「あのなぁ。もうしたくないとか、ないから」
「あうっ」
ありえないことをそうだと勝手に決めつけて、勝手にしょんぼりとする菜子の右頬を、軽くつねってやった。