俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
「父さんと母さん、もう出掛けたんだな」
「うん。今回は日帰りだって」
二人でリビングに入りながら会話を続けて、そのままソファーに座り込んだ。
「例の如く、『いつものところ』か?」
「そうみたい」
「毎月かかさずに行くって。二人にとって、よっぽど思い入れが強い場所なんだろうな」
「昔、私達家族が住んでいたところでもあって……私と俊光君の生まれ故郷でもあるって、お父さんとお母さん話してたもんね」
そう。お父さんとお母さんの旅行の目的地は、いつも決まってそこの場所。関東から一歩出たところにある、東海地方の県。温泉はもちろん、お茶や日本一のお山でも有名な場所。
お父さんとお母さんが言うには、その場所には、私が一歳で俊光君が四歳の頃まで住んで、それからお父さんの仕事の都合で、都内のこの家に引っ越してきたんだって。
そこの場所に住んでいた時のことは、私は当然『全くもって』だけど、物心がついてるかついてないかぐらいの年頃だった俊光君も、何となーくの雰囲気でしか覚えていないみたい。
「私と俊光君の生まれ故郷かぁー……」
兄妹の事実を知ってから改めて考えると、とっても感慨深くなっちゃって、夢見るように呟いたら、
「……行ってみたいか?」
「へぇ?」
俊光君から思わぬことを言われて、目を真ん丸くしちゃった。