俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
「俺もほとんど覚えてないし、詳しい場所とかも知らないけど、そこの県に足を踏み入れるだけでも、懐かしさを肌で感じ取ることぐらいは出来るかもしれない。
電車と特急を乗り継いで、たぶん三時間ぐらいだろうから、俺達だけでも行こうとすれば行けるぞ」
「…………」
『行こうとすれば行けるぞ』で、私の好奇心がドキドキと高まる。
私と俊光君の生まれ故郷で、私達家族が住んでいたところ。
確かに、行ってみたいって思うよ。気にはなってるよ。
私の本当のお母さんが、私を生んでくれた場所でもあるし。もしかしたら、俊光君の本当のお父さんも、いたかもしれない場所だし。
俊光君の言うように、懐かしさぐらいは感じ取れるかもしれない。そしたら、まだ明かされていない部分に対してのモヤモヤが、少しでも晴れるかもしれない。
でも……
「行くのは……まだいいや」
行きたい気持ちを無理やり抑えて我慢してるとかじゃなくて、本当に『まだいいや』って思える。
「私が高校卒業して、お父さんとお母さんが事実を打ち明けてくれてから、家族四人で思い出に浸りながら行きたいんだ。
私と俊光君を当たり前に兄妹として育ててくれたお父さんとお母さんには、本当に感謝してるもん。だから、打ち明けてくれるよりも先に、兄妹の事実のことをよりリアルに知ろうとすることは、やめておこうかなって。
私と俊光君に隠しておいてるのも、お父さんとお母さんに、何か想いがあってのことかもだから」
ちょっと真面目に話しちゃった照れ隠しで、最後に「えへへー」と笑ってみせた。
兄妹の事実のことは気になるけれど……
お父さんとお母さん、それと……俊光君がいるこの家族の中に、私も一緒にいられてるのが幸せだから。
今は、それで充分だよ。