俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
少しだけ重ねた唇が離れてドキドキしていると、俊光君が思い付いたように口を開く。
「なぁ、菜子」
「ん?」
「それならさ……俺達は俺達で、違うところへ出掛けようか」
「へぇ……? 違うところへ、お出掛け?」
「そう。お前、来月……というか、再来週、誕生日だよな」
「あ、ホントだ。もうすぐだね」
三月三日の雛祭りは、早生まれの私が、やっと十六歳になれる日でもあるんだよね。
「とはいえ、誕生日当日は、父さんと母さんも一緒にお祝いしたいだろうし。誕生日の前は、高校の学年末テスト期間中だろ?」
「うん」
「だから、誕生日よりもあとになっちゃうけど……そのお祝いがてらに、ちょっとばかし遠出するってのはどうだ?
もちろん、近場で行きたいところがあれば、そこでもいいけど」
「……ウソ」
俊光君。それってひょっとして、ひょっとしなくても……
「誕生日の、お祝いデート……ってこと?」
「まぁ……そう、だな……」
「っ、きゃーーーーっ!」
テレテレしながら『そうだな』と肯定する俊光君に、私の喜びと興奮が大爆発。座っているだけでいられなくなって、ソファーの上に飛び乗った。
「行くっ! 行く行く行く行く行く行くっ!
ぜっっっったいに行くぅーっ!!」
「うわっ! バカッ、ビョンビョン飛び跳ねるなって! ソファーが壊れるだろっ!」
「だって、だって、すっごく嬉しいんだもんっ!
俊光君っ、ありがとーっ!」
「……ははっ。たく、朝から騒ぐなよ。大袈裟なヤツだな」
やったぁーーーーっ! その前の学年末テストがなければ、なお良かったけど!
とにもかくにも、
『俊光君プレゼンツ・私の誕生日お祝いデート権』
見事ゲーット!
ちょっと真面目に話していたことも、甘いムードになってドキドキしていたことも忘れて、私は俊光君の隣で、いつまでもハシャギまくった。