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俊光と菜子のホントの関係

第24章 エピローグ『感謝』


「お父さんもお母さんも聞いてます? ホントに、いつまで経ってもお子ちゃまで困りますよ。一体、誰に似たんだかですよねぇー。オホホホ……」


 次から次へと、一人で賑やかに口を動かし続けてる。同時進行で手も動かしていて、墓石に添えっぱなしだった古い花を片しているが……喋る方に夢中になりすぎて、手付きが雑になっていってるぞ。


「美都子っ。もうちょっと厳かに出来ないのかっ。他の人にも迷惑だぞっ」

「あら、ごめんなさい。ここに来るの二ヶ月ぶりだったから、ついお喋りが弾んじゃって」

「まったく……」


 墓石の方は、ここに来てくれた人への感謝の気持ちを、文字にして表しているってのに……何て対応だ。まぁ、美都子のこういう遠慮のないとこは、今に始まったことじゃないのもわかっているし、治らないのもわかっている。

 墓石の下に収まっているのが――美都子にとって気の置けない存在だから、尚更そうなるのもわかっている。

 だからってな……その両親に対しても、遠慮がないっつーのはどうかと思うぞ。直接会ったこともないのに。

 その両親に直接会ったこともないのは……『俺も』だけど。

 美都子にやれやれとしながら、墓石に寄る。木杓子(きじゃくし)で上から水を掛け、タワシで緑苔や砂汚れなどを丁寧に擦り取る。美都子もやっと静かになり、新しい花に入れ替えた。


 墓石と周りの手入れを一通り終え、お線香の束に火を付けてから香炉に寝かせて置くと、煙が青い空の方へと昇りゆく。

 それを二人で見届けながらしゃがみ込み、祈りを捧げるように手を合わせた。


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