テキストサイズ

俊光と菜子のホントの関係

第24章 エピローグ『感謝』




 ……春香(はるか)。

 先月もこの地に足を踏み入れていたのに、時間がなくなってしまったがために、ここまで来れなくてごめんな。

 お前が、お義父さんお義母さんと一緒の墓石に収まってから、今度の三月で、もう十六年……。

 そして――お前が命がけで生んだ菜子も、雛祭りの日で十六歳になる。

 美都子が『いだいぃー!』と大騒ぎしながら出産した俊光なんて、今年の誕生日でとうとう成人だぞ。

 時の流れも、子供の成長も、ホントに早いものだな。実感する度に驚くよ。

 俺も今じゃ中老の仲間入り。本人に言うと怒られるが、美都子はアラフィフだしな。

 こうして忠実に歳を重ねていってるけど……ありがたいことに、すこぶる元気で日々を過ごせているよ。

 春香、いつもお義父さんとお義母さんと一緒に、俺達四人を手柔らかく見守っていてくれて、ありがとう。


「…………」


 合わせていた手を緩め、閉じていた目をゆっくりと開けると……

 隣で一緒にしゃがんでいる美都子が頬杖ついて、俺を優しく見つめて待っていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ