俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
「あ……待たせたか?」
「ううん。勝治さんも、私みたいに声に出してお喋りすればいいのにーって思って」
「えーやだよ。美都子みたいに、人目を気にせずにズゲズゲベラベラとうるさく喋るなんて」
「勝治さんっ、言い方ーっ」
「はははっ。だってそうだろ?」
「何よもーうっ。ねぇー春香ぁ、勝治さん意地悪いと思わない? そういえば、この間だってねー……」
ほらな。またズゲズゲベラベラと喋りだしたじゃないか。
おかしくてクククと笑いながら、墓石に向かって喋り続ける美都子の、Eラインが整った横顔を見る。
ファミレスの店舗でアルバイトとして受け入れた時から、当時店長だった俺にも遠慮がなく、喜怒哀楽もハッキリとしていて、一人で賑やかに口を動かす美都子。
やれやれと思う時が多々あるけれど……
持ち前のエネルギッシュさに引っ張られて、心を救われてきたことも多々あった。
「……なぁ、美都子」
「っ、あら。私、また喋り過ぎたかしら?」
「それもあるけど……
いつもここまで俺に付き合ってくれて、ありがとう……って言いたくて」
「あーもうっ。またそのセリフぅ? 毎回毎回聞き飽きましたっ。お腹いっぱい、耳いっぱいよぉっ」
俺からの、くどい感謝の言葉を聞くと、美都子はうんざり気味に耳を塞いだ。
「それに、ここには付き合いで来てるんじゃなくて、私も来たくて来てるんだってば。
春香は、私と俊光を受け入れてくれた恩人でもあって、初めて出来た親友でもあって……大事な家族でもあるんだから。
逆に私の方が、『いつもここに連れてきてくれて、ありがとう』って言わないと」
「美都子……」
「本当に、ありがとう……。勝治さん」
俺の『ありがとう』も、美都子の『ありがとう』も、お墓参りのことだけではなく――
家族になってくれた。
そのことにも、お互い今でも深く感謝をし合っている。