俊光と菜子のホントの関係
第24章 エピローグ『感謝』
「ねぇ、勝治さん。俊光と菜子に家族の事実のことを打ち明けたら……ここまでお墓参りをしに一緒に来てくれるかしら? そしたら春香とご両親、きっと喜ぶわよね」
「そのためにも、俊光と菜子には、事実のことを誠実に話さないとだな」
「本当。そうね……」
誠実に話しても……事実が事実なだけに、菜子が自分を責めてしまうかもしれない。
俊光も、覚えていなかった部分に対して、少なからずショックを受けるかもしれない。
心苦しくも思うが……
それでも二人には、全てをちゃんと話しておきたいんだ。その事実があっての、今の家族なのだから……。
「勝治さん、そろそろ行きましょう」
「あぁ……」
少しだけ湿っぽくなった空気の中、俺と美都子はようやく立ち上がると、もう一度墓石に目を向けた。
「また来月、だな」
「ええ。
春香、お父さんお母さん。今度は、桜と菜の花が満開の頃に来ますからね」
俺は、美都子が名残惜しそうに声をかけたのを見届けてから、空になった手桶を持った。
「……さてと。このあとは、『もう一つの家』の掃除が待ってるぞ」
「月一しか来れないから念入りにしたいとこだけど……今回はお墓参りの方の掃除を優先にしたから、家の方の掃除はちゃっちゃと済ませることになりそうね」
俺達家族が、この地にいた時に住んでいた家。
都内へ引っ越したあと、誰かに貸したり、売ったりすることはしなかった。
昔の思い出が詰まったままの状態で、ずっと取っておいてある。
いつの日かまた、この地に住むために。