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俊光と菜子のホントの関係

第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』



 私の部屋に誘うと、俊光君は机の椅子に座って、私はクッションを抱いてベッドの上に座った。

 未だにどっちか決めきれない上に、『もしも分身の術が使えたなら』とまで考え出しちゃった私を、俊光君は呆れたように笑う。


「たくっ、どんだけ優柔不断だよ。早く決めないと、誕生日からどんどん遠くなってくぞ」

「そんなこと言われたってしょうがないじゃん。十六歳の誕生日のお祝いプラス、大好きな俊光君と両想いにもなってから初めてのデートなんだよ? 私にとっては、超超貴重だもん。優柔不断にもなっちゃうよ」

「……そっか。そこまで迷っても、どうしても決まらないって言うんだったら…………よしっ。ならこうしよう」


 俊光君は、腕を組んで少し考えたあと、ハンコを押すみたいに手のひらをポンッと叩いた。

 頭が良くて頼れるお兄ちゃんでもあるから、きっと、何かいいアドバイスが思い付いたのかも。期待が膨らんだ私は、「なになに?」と、ワクワクしながら身を乗り出す。

 したら、


「二人で『じゃんけん』して決めようぜ!」

「…………へぇっ? じゃ、じゃんけん!?」


 まさかの、運任せぇー!?

 私にとって超超貴重なデートの選択をそんな、笑っちゃうほど単純な方法で決めようとするなんて……。いくら相手が子供っぽい私だからって、扱い方があんまりだよぉー。

 膨らんだ期待が、ガックシしたことによって、一気にしょぼーんとしぼんじゃったよぉ。


 なのに俊光君、私のガックシにお構いなしとばかりに、


「お前が勝ったら『遠出』。俺が勝ったら『近場』な」


 ハリキリながら、じゃんけんの体勢に入ろうとするし!


「へぇっ!? ちょちょちょっ、ちょっと待ってよぉ! 私まだ、それで決めるって言ってないしー!」

「問答無用。このまま勢いで行くぞっ。せーのっ、」

「あわわわっ」


 俊光君がいつになく、強引かつ勢いよく来るもんだから、私は思わず押されちゃって。


 気づけば――

「じゃんっ、けんっ、」と、二人で一緒に声を合わせて、

 最後の「ぽんっ!」で、手の形を変えて出していた。


 大事な選択を、勢いでじゃんけんにお任せしちゃった結果は――



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