俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「いいなぁー菜子は。ねぇー俊光ぅ、お母さんもそのうち旅行に連れていってよぉー」
「母さんは、父さんとたまに旅行してるからいいだろ?」
「お父さんとはまた別でしょう。私だって、息子と二人旅してみたいのにー」
「ははは。美都子は母親のクセに、よく息子に振られるよなー」
「勝治さん。ニコニコしながら、痛いとこ突っつかないで」
……父さんと母さん。俺と菜子が両想いにもなってから三週間くらい経つけど、全然気付いてなさそうだよな?
二人で日帰りの小旅行をするって言っても、菜子があそこまであからさまに浮かれていても、仲のいい兄妹としてしか捉えてないみたいだし。
先月のバレンタインデーの深夜に、俺と菜子が密かに身体を繋げようとして失敗した時もそう。俺の『プロレスごっこをしていた』という下手くそな嘘をまんま信じて、普通に説教しだしたもんな。
父さん母さんからしたら、俺と菜子は『本当の兄妹』なんだな。それほど、分け隔てなく育ててきたり可愛がったりしてきてくれたんだよな。
俺と菜子だって、事実を知っても、かけがえのない兄妹だと思ってる。
だけど……
「……あのさぁ、」
俺が遠慮がちに声をかけると、父さんと母さんが若干不思議そうに顔を向ける。
「父さんと母さんに、お願いがあるんだけど……いい?」
「あら、なんか珍しいわね。あんたが改まってお願いだなんて」
「いいよ、俊光。言ってごらん?」
だけど……俺と菜子にプラスされた、もう一つの秘めた気持ちの方も、大事にしたいと思っている。
(――大好きな俊光君と両想いにもなってから初めてのデートなんだよ? 私にとっては、超超貴重だもん。優柔不断にもなっちゃうよ)
真っ直ぐに俺のことを『大好き』と想ってくれている菜子を、大事にしたい。
(だって……俊光君と、オーマイガーのやり直しをしたかったんだもん)
俺だって……菜子とオーマイガーのやり直しをしたい。
父さん、母さん。俺と菜子のもう一つの関係を打ち明けるまでは、ちゃんと兄妹としても過ごしていくから。
隠し事をしていても、極力嘘はつかないようにするから。
「今度の日帰り小旅行をさ……」
少しの間だけ、俺と菜子だけの時間を、思いっきり過ごさせてほしいんだ。