俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「菜子、どうした?」
涙する私に気づいた俊光君が覗き込む。心配そうな視線に、涙は止まるどころか、流れ落ちるばっかり。
「えへへっ。や、やだなぁ、私ったらー」
無理しておどけて、袖で目をゴシゴシ。
ホントやだ。無意識とはいえ、泣いちゃったりするなんて。これじゃあ私、恥ずかしいヤツだしー。
デートが終わっても、俊光君とバイバイしたりしないのに。
帰るところは一緒なのに。
「菜子……?」
わかってるけど……デートがあまりにも楽しくて、幸せいっぱいだったから、
このまま帰っちゃうってのが、ものすごく寂しい。跳ねてた足取りも、帰るとなった途端に重くなっちゃった。
ごめんなさい、俊光君。私……
「……たくない」
「え?」
「まだ……帰りたくないっ」
まだ『はい、おしまい!』にしたくない。
まだ俊光君と二人だけの時間を過ごしたい。
まだ、デートをしていたい。
「……そっか」
俊光君が、ため息混じりに呟いた。