俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
「社会人になったりでもしたら、もっとそれぞれになっていくんだ。今のうちに、今しか作れない思い出を、二人でたくさん作っておくといい。お互い離れていってしまっても、心に刻まれた思い出が、絆を繋ぐいい糸にもなってくれるんだからな」
「そうよぉ。私達に遠慮なんかしないでいいから、二人で思いっきり楽しんでらっしゃい!」
「っ……父さん、母さん……ありがとう……」
懸念や反対をするどころか、思い出作りに背中を押してくれる。子を想う親の愛情が、真正面からひしひしと伝わってくる。ヤバいコレ。うっかり気を抜くと、感涙してしまうヤツだ。
良かった。嘘で固めた芝居を打ってまで泊まろうしないで。思いきって面と向かって正直に打ち明けて、本当に良かった。
「したら……お願いついでに、実は協力してほしいこともあって……」
父さんと母さんの寛大な態度に調子づき、俺は話を付け足そうとする。
「いいわよ。こうなったら、とことん聞いてあげる」
「俊光、なんだ?」
「日帰りを一泊に変更することを、菜子には内緒にしておいてほしいんだ。当日、帰る直前になって、サプライズで言ってやろうかと思ってさ」
「まぁ、面白そうじゃない。あの子、絶対に驚くわよー」
「よしっ、わかった。お父さん達もボロが出ないように、何も知らない親を、役者になったつもりで演じきるとしよう」
「あ……ありがとう……」
両親の明るく前向きな協力姿勢に……これまで何ともなかった俺の良心が、ここで急にチクチクとしだした。
血が繋がっていない兄妹だということを知らないフリして、菜子と一泊したいとお願いをした自分が……菜子にじゃんけんを持ちかけた時よりも、とてつもなく卑怯な人間に思えてくる。
特に、実の娘をこよなく愛する父さんに対しての罪悪感が、半端ない。